No Gain without Pains

自動車関連エンジニアによる読書のすゝめ

【おすすめ本】数学界の超難問「フェルマーの最終定理」をめぐる300年の歴史ヒストリーを描いた名作

フェルマーの最終定理  サイモン・シン 著、青木薫

数学に興味のない人も少しは耳にしたことがあるかもしれない

フェルマーの最終定理

私も理系でありながら数学は苦手なのですが、聞いたことくらいはありました。

そんな「フェルマーの最終定理」がピエール・ド・フェルマーによって考え出されてから、1993年にアンドリュー・ワイルズが証明するまでの各時代の天才達が苦闘した300年間を描いたドキュメンタリーです。

文体は読みやすく、癖もないので、スラスラ読めてしまいます。

そして、難しい数式はほとんど出てこないので、数学が苦手な人も問題なく読めると思います。

というか、フェルマーの最終定理の数式は中学生でもわかるくらい超簡単なので、とっつきやすいし、でも、この式を知っていれば何か頭が良くなったような気すらしてきます。

数学が好きな人はもちろん、歴史に興味がある人、周りにちょっとした自慢をしたい人、定理の名前がかっこいいから気になる人なんかも一読するのをおすすめします。

 

●あらすじ & 所感

300年もの間、その証明を拒んできた「フェルマーの最終定理」をアンドリュー・ワイルズが証明するまでのヒストリーが、その300年の歴史を追って描かれています。

また、ページ数は、本編で462ページと結構な文字数があり読み応えがあります。

理系のくせに数学が大の苦手である私にとって、ワイルズが現代数学の知識とテクニックを総動員して証明した内容については全く理解できませんが、それがどれくらい凄い事かはこの本を読めば簡単に想像することができます。

ただ、その証明は数学を専門に扱う数学者ですら完全に理解できる人は世界に一握りと言われているくらい難しい内容だそうです。

ピタゴラスに始まり、フェルマーが提唱し、それを各時代の天才達が証明しようとして敵わなかった事実を見れば、そして、その天才達の顔ぶれを見れば、それがどんなにすごい事かがわかるでしょう。

あの解析学の権化と言われたオイラーですら証明できなかったんですから

 

さて、ピエール・ド・フェルマーとはどのような人物だったのでしょうか?

本編では、かの天才ガウスが「数学者の王」と呼ばれているのに対し、フェルマーは「アマチュアの大家」なんて呼ばれていることが紹介されています。

要するに、フェルマーにとって数学は職業ではなく趣味みたいなものだったのでしょうね。だからこそ、悪戯に証明を全て記述しなかったりしたんだと思います。

そんないたずら心が生んだ「フェルマーの最終定理」は数々の天才達を悩ませる事になります。

ワイルズが証明に挑むまでには、様々な数学者が一歩一歩、扉を開けていき、その歴史の中には悲劇もたくさんあったようです。

最終的にワイルズは、現代数学のテクニックをフルに活用し、8年の苦闘の末、証明を完成させるわけですが、そこに至るまでの重要な役割を日本人数学者が果たしていたということは、同じ日本人として誇りに思えますね!

そう、この物語には何人かの日本人数学者が出てきます。

しかも準主役級の役割で!!

日本人も捨てたもんじゃないっす

そして、最後の章ではフェルマーの最終定理の他の数学の未解決問題(ケプラー予想や4色問題等)について書かれており、その中でコンピュータによる問題の解決が主流になるかもしれないという筆者の懸念について書かれており、その気持ちはわからないでもないけど、もうその流れは止められないと思うし、将棋やチェスでプロがAIに勝てなくなってきた今、時間のかかる計算はコンピュータに任せて、人間はさらに一歩進んだ抽象度の高い思考をしなければならない時代がくるかもしれませんね。

それこそ、お釈迦様のように・・・